2022.09.13メールマガジン

【特別インタビュー/公務員採用の最新動向】-TAC株式会社 教育第五事業部 事業部長 松下 拓也 氏

国家公務員の合格発表が終わり、地方公務員の選考も後半戦を迎えている。それを反映して、公務員採用に関するニュースを見かけるようになった。

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・国家公務員「総合職」1次試験 大学2年の秋から受験可能へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220808/k10013760481000.html

・国家公務員一般職試験 合格者最多に コロナ対応で採用人数増
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220816/k10013773181000.html

・地方公務員の人気低下、採用改革で歯止め 自治体が知恵(有料記事)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC12CJN0S2A510C2000000/
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生産年齢人口の減少や民間企業の新卒採用トレンドなどに影響を受けて、公務員採用にもさまざまな変化が起きているようだ。
今回は、TAC株式会社教育第五事業部の松下 拓也事業部長に、最新の公務員採用事情についてお話しを伺った。

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◆国家公務員の概要とトピックス
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国家公務員には、各省庁が独自の採用試験を行ない特定の省庁で専門分野に特化する職種、外務省専門職員や国税専門官などの専門職と、一括した採用試験を行ないその後に省庁が決まっていく職種、「国家総合職」「国家一般職」があります。

国家総合職も国家一般職も、人事院が実施する試験(筆記、論文、面接など)に合格する必要がありますが、「試験合格=採用」ではありません。その後、官庁訪問をおこない、改めて各府省庁別の選考(面接やグループディスカッションなど、内容は府省庁により異なる)を受ける必要があります。試験に合格しても、訪問先の選考で内定を得られなければ“無い内定”という
こともあり得るわけです。

直近の倍率で言えば、人事院がおこなう試験で5~17倍(試験区分により異なる)、官庁訪問で2~3倍程度となっています。
最終的な内定は各府省庁から出されるため、身分は内定先機関の職員となり、府省庁をまたいだ異動はありません。各行政分野のスペシャリストとして仕事をすることが求められるため、どの府省庁で何をしたいのか、明確な目的意識が求められます。

最近話題となったトピックスとしては、減少が続いていた申し込み者数が6年ぶりに増加に転じたことが挙げられます。
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・「キャリア官僚」採用試験申し込み者数 6年ぶりに増加
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220415/k10013584391000.html
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主な要因としては、女性の申し込み増加があります。人事院を中心に、女性向けセミナーやイベントなど、積極的にプロモーションしたことが功を奏したのでしょう。女性向けの採用情報ページを設け(※1)、「仕事と家庭の両立支援」を紹介するなど、採用拡大の姿勢が鮮明です。

6年ぶりの増加と言っても、最も少なかった前年度を上回っただけで、厳しい状況は続いています。労働環境の改善、試験実施の時期や機会の拡大など、今後もさらに申し込み増加のための施策がおこなわれていくでしょう。

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◆地方公務員の概要とトピックス
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都道府県・市町村などの自治体で働く地方公務員は、日本の公務員全体の8割以上を占めています。府省庁別に採用する国家公務員と違い、自治体運営全般を担う総合職として採用され、ゼネラリストとして業務に携わります。

一般的な採用フローを紹介しましょう(※2)。
[1]出願(4月から受付)
[2]第1次試験(5~9月頃/教養(基礎能力)、論文、専門など)
[3]第2次試験(7~10月頃/人物試験(個別面接、集団面接、集団討議))
[4]合格、内定(8月以降)

試験項目の配点比率や倍率で見ると、地方公務員は国家公務員より面接重視、人物重視の傾向があります。第1次試験(筆記)を通過しなければ、第2次試験(面接)には進めないので、筆記試験対策は必須ですが、それだけで内定を得ることできません。

志望動機などをじっくりと聞く個別面接は、ほぼ全ての自治体で実施されますし、集団討論(グループディスカッション)もおこなわれます。自治体によっては、最終選考の面接官を市長が務めるなど、優秀な人材を確保するため、さまざまな工夫をおこなっています。

今年は採用予定数を増やした自治体が多かった一方で、申し込み者数は減少しました。要因としては、民間企業の堅調な採用意欲と選考の早期化が挙げられます。公務員試験の準備には時間を要しますし、合否が判明するタイミングは
大学4年生の夏前後です。早期に内定を得られたら、そちらに流れるケースは少なくないでしょう。
新型コロナによる景気悪化の懸念から人気はやや盛り返しましたが、全体としては減少傾向が続いています。

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◆民間型テスト(SPI、SCOAなど)の拡大
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民間企業の採用選考で使われるSPIやSCOAなどを、第1次試験に利用する動きが広がっています。試験負担を軽減し、申し込み者数を増やすことが目的です。実際、導入した自治体では増加が見られます。また、試験時期を4月頃まで早めて、民間企業と並行してキャリア選択できるようにする自治体も増えてきました。

民間型テストの導入は、自治体にとって民間企業がライバルになりやすい大都市近郊で進んでいます。弊社の調査結果の一部をご紹介しましょう。
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<市役所における民間テストの導入割合>
・東京/85%、神奈川75%
・大阪/77%、京都/57%、奈良/92%、兵庫/54%
・福岡/52%、大分/56%

(全国平均/41%)
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民間型テストの導入割合は、今後もう少し進むかもしれません。ですが、従来型の筆記試験も継続すると考えます。地方を中心に多くの自治体では、公務員のステイタスは依然高く、競合する民間企業も限られます。申し込み者数が確保できている地域では、試験内容に大きな変化はないでしょう。

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◆公務員の就職活動・採用活動
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公務員を志望する理由として、安定した収入や職場環境といった条件面を挙げる学生はいます。確かにそれも魅力の一つではありますが、公務員の仕事をしっかり理解して、自分の価値観に沿ったやりがいや志望動機を伝えることが求められます。

最近はインターンシップを実施する自治体が増えてきました。こうした機会はぜひ活かしてください。しかし、受け入れ人数が限られているため、民間企業のように情報サイトに掲載して積極的に広報するケースは多くありません。こまめにホームページをチェックする必要があるでしょう。

各自治体の採用予定人数は、意外と年度による波があります。例えば、東京都(1類B、行政一般)では、22年卒が85名で23年卒は360名となっています。札幌市は22年卒が120名、23年卒は200名です。就活支援や新卒採用にかかわる方でベンチマークしている自治体があれば、職員採用情報は要チェックです。

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◆これからの公務員採用
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近年、ICT枠やチャレンジ枠などが新設されるなど、新卒の採用入り口は多様化しています。試験情報を正確に掴むことで、多くの受験チャンスを活かすことができるでしょう。

求める人物像で言えば、公務員と民間企業の違いは小さくなっていると言えます。民間企業と協業や連携しながら進める仕事は増えていますし、専門知識を要する分野では、修士や博士の採用にも注目が集まっています。世の中の変化に合わせて、少しずつですが互いの人材の行き来も増えていくのではないでしょうか。

早くから準備して単願で公務員を目指すのも良いですし、就職活動をするなかで公務員が選択肢に入ってくることがあっても良いでしょう。試験方法は多様化していますし、中途採用もあります。公務員か民間かで結論を出してしまうのではなく、フラットに自分のやりたい仕事を考え、キャリア選択の一つとして検討してもらえたら幸いです。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

※1
人事院の女性向けホームページ
https://www.jinji.go.jp/saiyo/jyosei/jyosei_top.html

※2
2022年度公務員試験の日程
http://ur2.link/vm2H

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<組織データ>
●TAC本社
〒101‐8383 東京都千代田区神田三崎町 3-2-18 TAC本社ビル
https://www.tac-school.co.jp/index.html

公務員総合サイト
https://www.tac-school.co.jp/kouza_sogo_komuin.html

○主な事業内容
個人教育事業、法人研修事業、出版事業、人材事業

○お問い合わせ窓口一覧
https://www.tac-school.co.jp/toiawase.html

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