2022.06.28メールマガジン

学生のマスク問題を考える

新型コロナが蔓延する前から、衛生上の理由以外で着用する「伊達マスク」をした学生は気になっていました。花粉症などによってマスク生活が長引き、マスクの副次的なメリット(顔を隠すことで得られる安心感など)に気付き外せなくなった・・・というケースが多かったように思います。

そして現在、この副次的メリットを多くの人が実感しています。マスクは人前で外すものではない「顔パンツ」という言葉まで生まれました。

政府から『マスク着用の考え方及び就学前児の取扱いについて(※1)』が先月23日に発表され、約一か月が経ちました。しかし、屋外を無言で歩く人のなかで、マスクを外している人を見つけるのは困難です。同調圧力で外しにくいケースも多いと思いますが、より積極的にマスクを着用している人も少なくないでしょう。

日本インフォメーションが2月に実施した『マスク生活が長期化した今を読み解くマスク着用の意識・行動調査(※2)』では、10~60歳代の男女約1,000人による調査結果を見ることができます。それによれば、コロナ収束後も「必ず使用」「できるだけ使用」を合わせたマスク継続派が54.5%と過半数を占めました。前回調査(2021年9月)では38.6%だったので、マスク継続派は大幅に増えていることが分かります。

では、10代後半から20代前半に該当する大学生は、マスクに対してどんな認識を持っているのでしょうか。私自身が関わっているセミナーや講座で、簡易アンケートを実施してみました。(2022年6月20日現在)

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●大学生活においてマスク無しでもOKになった場合、あなたはどうしますか?

40.0% マスク無しで過ごす(マスクなしの方がいい)
56.2% マスクありで過ごす(できるだけマスクをしていたい)
3.8% その他

(大学1~3年生、n=290)
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対象が限定的な簡易アンケートなので精緻な検証はできませんが、前述の調査(※2)から微増の55%強の学生がマスク継続派と言えそうです。学生コメントを見ると、マスク本来のメリットである“感染予防”を理由に挙げる意見もありますが、顔を覆うことによる副次的メリットも目立ちます。

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<マスク継続派の意見>

○ひげを剃らなくていい/フルメイクしなくても良い
○何年もマスクを着けて過ごしてきたので、外して素顔をさらすことに
抵抗感が生じてしまった。
○顔を出すことにもともと自信がなかったので、正直今のマスク生活には
満足している。
○マスクを着けていれば、顔の半分が隠れるので安心する。
人に顔を見られるのが苦手だし、マスクを着けていた方が目を見て人と
コミュニケーションがとれる。
○自分の顔にコンプレックスがあったので、以前は常に容姿を気にしていた。
マスクを着用するようになってからは気楽に生活できるようになり、相手の
目をまっすぐ見ることにも抵抗がなくなった。人とのコミュニケーションが
より円滑になったと感じる。
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“コミュニケーションを円滑にするためのマスク着用”という意見は、社交不安が強い若者なりの工夫なのかもしれません。一方、マスク無し派のコメントからは、微妙に揺れ動く気持ちが感じ取れます。

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<マスク無し派>

○感染リスクが怖くて着け続けていたら永遠に外せない。
マスクを外せるチャンスが来たら外したい。
○今マスクを外さないと、一生マスク着用の人生になりそうだから。
○コロナ前は、一年中マスクをしている人の気持ちが分からなかった。
でも今は、マスクをとった顔はプライベートなものだから、見せることに
恥ずかしさを感じる。マスクを着けていたい気持ちはあるが、マスクで
相手の顔は覚えにくいし息苦しさもある。メイクもお洒落も楽しみたいので、
がんばって外したい。
○3年前までマスク無しが普通だったのに、今ではマスク無しで外を歩くのが
恥ずかしい。マスクは人の思考まで狂わせてしまった。以前の生活に戻って
ほしいと切実に願う。
○会話において表情は大事だと感じる。笑顔にも満面の笑みや苦笑いなど、
多くの情報が含まれる。表情から分かることは多い。外見で判断するのは
よくないのかもしれないが、人となりを理解する一つの材料として必要だと
思う。
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顔を隠す安心感と同時に、顔を出すことへの葛藤や鼓舞など、複雑な心境が伝わってきます。こんなコメントもありました。

「『マスク詐欺』という言葉ができてから自分に自信が持てなくなった」。マスク詐欺という言葉は、昨年11月に男性3人組YouTuberがマスクを外した女性の顔を見て、「マスク偽証罪」などと言い、おもちゃの手錠をかける動画が炎上したことがきっかけで、若者間で広がりました。マスク無しで生活することへのハードルは、なかなか下がりそうにありません。

マスクをしていると見えない部分はイメージで補うため、実際よりも魅力的に感じるというのは部分的に実証されています(※3)。多くの大学生が、マスクを外したくないと感じるのは当然かもしれません。今危惧しているのは、対面面接でマスクを外すことを求められたとき、学生が強い抵抗を示さないか・・・という点です。それでなくても対面は緊張するのに、着け慣れているマスクを急に外すとなれば、強いストレスが生じるでしょう。

不安な場合は、面接前にマスク着用について問い合わせるのも一案です。企業サイドはマスク対応を事前にアナウンスしておくとよいかもしれません。そして、学生が安心してマスクを外せるよう、ガイドラインに従いつつ、まずは自分のマスクを外すことからスタートしたいと思います。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

※1
マスク着用の考え方及び就学前児の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000942851.pdf

※2
日本インフォメーション(株)調べ
https://www.n-info.co.jp/report/0030

※3
マスク効果で顔の魅力アップ!? コロナ禍で変わった印象
https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20210924_g01/

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