2021.11.30メールマガジン
今どきの就活アドバイスに関するあれこれ
新型コロナによって、大学生活は大きな制約をうけました。
これまでの当たり前、例えば通学する、対面で授業をうける、廊下ですれ違う友人と雑談する・・・といった風景を目にしたとき、嬉しさを感じるぐらいには、長期にわたり風変わりな大学生活を送っていたと言えます。
私たちも対面接触を制限され、外部の人とのコミュニケーションは、オンラインを介して行われることが大半です。それはそれで便利なこともあるのですが、二十歳前後の学生に与える影響を考えると、不安を覚えることが多々あります。その1つが“情報手段の偏り”です。特に、就職活動における情報収集では、気になることが増えました。
以前から、SNSや動画で選考対策や口コミ情報をチェックする方法はありましたが、好まない学生層も少なからず存在していたので限定的でした。それ以外の多様な情報の入手経路(大学の友人や先輩、ゼミの先生やメンバー、キャリアセンターなど)も確保されていたので、それほど偏ることなく、バランスを保てていたように思います。
しかし、“おうち時間”が増えたことで、オンライン情報への偏重傾向が強まっていると感じます。オンラインOBOG訪問など、本人が能動的に動いて得る情報はよいのですが、眺めるだけで分かった気になるTwitterやInstagramなどのSNS情報、YouTubeなどのインパクト重視の動画情報では、どうしても偏りが生じます。
学生が得る情報のオンライン比重が高まったことを背景に、「元人事」「採用担当」「キャリアアドバイザー」などを名乗る就活情報アカウントが目立つようになりました。有益なものも多いのですが、中には「ちが~う!」と画面に向かって叫びたくなるような内容もあります(笑)。
あるアドバイスでは、録画選考の心得として「内容よりも印象!」と明言していました。人だけが評価する録画選考なら、それも1つの戦略ですが、企業による好みもあるはずです。AIも評価する面接システムでは、最もやってはいけない対応と言えます。採用担当者のアカウントでは、自社+α程度の知見で断定している情報も少なくありません。
別のアカウントでは、逆質問に回答してもらったあと「参考になります」と返すのは間違い!面接官が嫌がる言葉遣いです・・・と書いてありました。これが“間違い”なら、何が“正解”なのか? 「勉強になります」だそうです。私の頭のなかは「?」マークでいっぱいになってしまいました。
学生を不安にさせる内容が多いこのアカウントは、オンライン専門の就活塾による運用でした。
就活情報で参考にしたYouTubeチャンネルを学生に尋ねたところ、あるタレントの動画を紹介されました。オンラインでのインパクトある話し方、話の組み立て方が勉強になるそうです。自分と似た雰囲気のタレントであれば参考になるかもしれませんが、「こんな風に話せるようになりたい」という憧れだけで真似をすると、イタイ就活生になってしまいそうです。
SNSや動画の就活アドバイスには、奇をてらった内容が一定数存在します。鵜呑みにせず、自分で判断することが求められますが、実社会の経験が乏しい学生には、簡単なことではありません。なので、次のようなアドバイスを伝えるようにしています。
・断言する人のアドバイスには注意。信頼できる別の社会人の意見も聞こう!
・発信している人や組織の属性、業界を理解して限定的に情報を受け取ろう!
・キャリアセンターや選考を受ける企業の人事に直接尋ねてみよう!
玉石混淆な就活アドバイスとの付き合い方では、「複数の社会人が同様のアドバイスをする場合、マナーや習慣に該当する社会人として守るべき内容。人によって異なるアドバイスは、その人が経験した仕事や業界の流儀に影響されているので、これが正解!という内容ではない。自分の好みで取捨選択して大丈夫」とアドバイスしています。このアドバイスも、同様のスタンスで聞くことを求めつつ・・・。
学生にアドバイスしたり、評価したりする立場のときは、自分の意見の限定性を意識しています。複雑で多様な世の中です。全ての人に当てはまるアドバイスもなければ、評価も存在しないでしょう。それを理解しながら学生と向き合うことが大切と感じています。〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕
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