2021.11.02メールマガジン

<就活とLGBT>今後に向けて重要になることとは

近年、様々なシーンでLGBTが話題に上ることが増えてきました。
就職活動・採用活動においても例外ではありません。
しかしながら、まだ情報の多くが明らかになっていないといえます。

今回のメルマガでは、学生アンケートや大学キャリアセンターへのヒアリングをもとに、就職活動・採用活動の場におけるLGBTの実態を見ていきたいと思います。

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■アウトライン
【1】アンケート調査への問い合わせと実態
【2】学生の認識
【3】大学・キャリアセンターの実態
【4】企業の情報開示
【5】今後にむけた情報収集の重要性
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【1】アンケート調査への問い合わせと実態
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「アンケート調査に”性別”の欄は不適切です」- 2021/6/6 20:21

弊社運営の就職サイト「ブンナビ×読売新聞」のサポートデスクに、学生さんからの1通のメールが届きました。
月に1回、定期的に実施している学生アンケートの設問項目「男女」の設問に対しての連絡でした。過去15年以上、そして年間15回以上、同様の形式でアンケート調査を実施している中で“初”のお問い合わせでした。

この連絡を受け、弊社で翌7月に実施した「採用総括戦線2022」の学生向けアンケートにおいて、性別の欄を「男性・女性・回答しない」として調査しました。結果、「1.2%」の学生が「回答しない」という結果となりました。

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【2】学生の認識
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電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、LGBTという言葉の認知度は、以下のような変化をたどっています。
【認知度】2015年調査37.6%→2018年68.5%→2020年80.1%

また、「LGBT層に該当する(と算出された)人」の推移は以下の通りです。
【割合】2012年5.2%→2015年7.6%→2018年8.9%→2020年8.9%

※出展:「電通LGBTQ+調査2020」「電通LGBT調査2018」「電通LGBT調査2015」「電通総研LGBT調査2012」
※「該当する層」は、2012年と2015年以降で調査方法が異なるため単純比較はできません

認知度が高まるLGBTについて、学生の”就活における認識”を調査しました。
結果、特に「企業の採用活動において配慮すべき」という声が多くあることが分かりました。

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【Q】就職活動において、LGBTに配慮している企業情報を知りたいと思いますか。
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19.6% はい★
42.9% どちらかといえばはい★
16.5% どちらかといえばいいえ
21.1% いいえ
└→★(どちらかといえば)はい = 62.5%

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【Q】企業が採用活動を行う上で、LGBTに配慮すべきだと思いますか。
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54.1% はい★
34.9% どちらかといえばはい★
6.8% どちらかといえばいいえ
4.3% いいえ
└→★(どちらかといえば)はい = 89.0%

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■LGBTに関する学生の意見・コメント・認識
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●これからLGBTの方はさらに増えていくと考えられるから、多様性を重視すべき。
●自身はLGBT当事者ではないが、配慮の有無が社風を分けると思う。
●性別欄のない履歴書が提出できるとよい。性別をES等に書かせるべきでない。
●履歴書やエントリーシートの性別記入欄を廃止する。そして、髪の毛の長さ、スーツ、靴を男性女性関係なく統一するか、全て自由にする。
●そういう世界になってきている。人の個性によって対応を変える上司がいる場所で働きたくない。国際的なマナーになる。

※出展:ブンナビ2023学生アンケート[2021年9月調査]

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【3】大学・キャリアセンターの実態
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では、実際に学生の進路支援をする大学キャリアセンターは、どのような状況なのか、いくつか声をまとめました。ここでは、「確実に増えてきている」という認識がある一方で、「具体的にどうアクション・判断するか悩ましい」といった実態が垣間見えます。

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■大学キャリアセンターの声
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●学内セミナー出展企業向けアンケートで「LGBTへの配慮の有無」を聞くか検討したが、最終的に未実施。
●就職課から積極的にアプローチはしていないが、学生の方から話をしてくるケースがある。そういう学生は実際にいる。
●大学運営として配慮がないことでクレームになるということはないが、大学職員側が敏感になっている。
●そういう人が増えている。ただ、隠して就活している人が多い。
●大学としても「増えてきている」ということを伝えたいが、具体的なアクションはまだとれていない。
●“OBOG”という表現をやめて「卒業生」という表現に変更。
●履歴書に「男女」欄があり、答えづらいという学生相談。大学指定の履歴書から、項目を外すべきか迷っている。

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【4】企業の情報開示
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では、採用活動を行う企業側の情報開示はどのようになっているのでしょうか。

東洋経済新報社の発行する『 CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』には、「LGBTに対する基本方針・取り組み」という項目があり、大手企業を中心に一定数の回答が掲載されています。

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■企業側の「LGBTに対する基本方針・取り組み」の開示例
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【A社】
基本方針: あり
取り組み: 【行っている】配偶者に認められる各種休暇制度、育児・介護支援制度をパートナーにも適用した「パートナーシップ制度」、トランスジェンダーへの配慮を定めたガイドラインの新設、社員ネットワークによる啓発活動、LBGTの理解を促進するダイバーシティ研修、相談窓口の設置、LGBT社外イベントへの協賛等を実施。19年5月には国連の「LGBTIの人々に対する差別解消への取り組み~企業のためのグローバル行動基準~」に署名

【B社】
基本方針: あり
取り組み: 【行っている】社内通達発出による性的指向・性自認に基づくハラスメント禁止を啓蒙、組織長研修における差別的言動の禁止を啓蒙、相談された際の留意点を周知、採用時の応募書類の性別欄に性別によらず選択できる項目を追加、性別によらず誰もが使えるトイレを本社に設置
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そして実は、弊社の提供する「ブンナビ×読売新聞」でも、同データを完全収録しています。
以下のような手順で調べることができます。

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▼「LGBTに対する基本方針・取り組み」の確認手順
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企業を検索
→企業詳細ページへ
→「CSRタブ」をクリック
→最下部「多様な人材の能力活用・障害者雇用」内に掲載

例として、以下のような条件(表示順)で検索いただくと、発見しやすくなっています。

▼商社業界×育休復職率【降順(高い順)】(ブンナビ×読売新聞2023)
https://bunnabi.jp/tsf.php?prm=sjk211026

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【5】今後にむけた情報収集の重要性
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ここまで、学生・大学・企業の認識や実態をまとめてまいりましたが、私は以下の点において疑問符が付くと考えます。

・まだまだ議論が深まっていないのではないか?
・議論をするための情報が集まっていないのではないか?
・情報を受容するだけの土壌が出来上がっていないのではないか?

この領域は非常に機微な情報であり、発信する側にも勇気がいることだと思われます。
だからこそ「声なき声」にならぬよう、まずはそれぞれの組織において匿名性の高い状態での調査を実施し、その結果を認識して発信していくべきだと考えます。

調査・ヒアリングの姿勢は「受容するする土壌がある」という認識につながります。
そこから情報を集め、議論し、結果として判断やアクションにつながっていくものだと考えます。

〔ブンナビ編集長 間宮 康之〕

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