2021.10.05メールマガジン

オンライン授業で見えてくる学生の学ぶ姿勢

大学の夏季休暇も終わり、後期授業がはじまっています。新型コロナの感染状況をみながら、授業形式(講義、実習・実験、ゼミなど)や履修人数をふまえたガイドラインにしたがい、対面とオンラインによるハイブリッド型授業が、多くの大学でおこなわれていることでしょう。

オンライン授業がはじまって1年半以上が経ち、私自身の経験値もずいぶん上がってきました。今回は“オンライン授業あるある”を中心に、気取らない学生の日常生活についてお話ししたいと思います。

◆出席率アップのオンライン授業
大学関係者には当たり前のことですが、40~50代の方が大学生だった頃に比べて、授業の出欠席は厳密に管理されています。文部科学省の指導にしたがい、3分の2以上の出席を単位付与の条件としている大学が多く、毎授業後に提出するリアクションペーパーを平常点として加算するケースも少なくありません。

人事の方から「今の学生はずいぶん真面目」といった声を聞くことがありますが、授業に関して言えば、「出席しなきゃヤバイ!」という感覚の方が強いでしょう。

私の事例で言えば、グループワークを毎回おこなう敬遠されがちな授業でも、対面で85%前後の出席率を維持していました。今はZoomを使ったリアルタイム授業が多く、オンラインでも毎回グループワークをおこなうため、学生には相応のストレスがかかります。出席率は下がるかも・・・と当初は心配していましたが、逆に10ポイント近くアップして、平均95%前後をキープしています。

当然、学生が頑張っているからですが、オンラインならではの創意工夫(?)も要因の1つかもしれません。

◆オンライン授業あるある
<パソコンの前にいない学生>
少人数ワークのためにブレイクアウトルームへ招待しても、メインルームから移動しない学生が必ず何人かいます。何度呼びかけても無反応です。

授業用Zoomにアクセスはしていても、パソコンの前には誰もいないのでしょう。熟睡しているのかもしれません。とはいえ、データダイエットのため、ほとんどの学生はカメラオフなので、サボっていると断定することはできません。該当学生には、授業後にメールで個別に事情を確認していきます。チェックされていることが分かると、このケースは一気に少なくなります。

<さりげなく退出してしまう学生>
オンラインの場合、クリック1つで退出できるので、気軽に授業を抜け出す学生が出てきます。グループワークに苦手意識を持つ学生は一定数いるので、ワーク開始前になると参加人数を示す数字がすっ~と減ることも珍しくありません。個別に事情を聞くと「通信環境が悪くて退出になってしまった」という返事が多く返ってきます。

これは本当にあり得る理由なので、意図的な行為との区別が困難です。そんなときはZoomのアクセスログを活用します。不慮の退出なのにすぐの再アクセスがなく、ワーク終了後にログインしている理由を確認するのです。入退出時間が記録されていることが分かると、意図的な途中退出は徐々に数を減らしていきます。

<どんな状況でも授業に出席してしまう学生>
ネットにつながっていれば、どこからでも授業に参加できる。これを活かした(?)ユニークなケースもあります。ある学生はアルバイト先の休憩室から受講していました。授業開始ギリギリまでアルバイトをして、終わったらすぐに戻るシフトで働いていたようです。

別の学生は電車のなかから受講することがあると話していました。1限目はオンラインで、2限目が対面といった場合、受講しながら通学するパターンは意外とあります。「話せないがチャットでワークに参加するので、Wi-Fi完備のカフェから出席を認めてほしい」と言われたり、「授業開始までに帰宅できないので、親戚宅から10分遅れで授業に参加する」と連絡してきた学生もいました。オンライン授業の高い出席率は、学生の努力の賜物とも言えそうです。

◆オンラインで見えてくる学生像
リアルタイムのオンライン授業では、LINEで友達とおしゃべりしていても分かりません。他授業のレポートだって書けちゃいます。対面のように学生の様子を目で確認できないので、教える側が疑心暗鬼になることもあります。

運営面で言えば、対面の方がよほどシンプルです。一方で、オンラインの方が“より言葉が届く”と感じることが多々あります。以前よりも深い考察がなされたレポートも増えたように思います。

オンライン化でメールのやり取りが増え、言語力や論理的思考力のレベル差を感じることが多くなりました。褒められる行為ばかりではありませんが、なんとか出席しようと工夫する姿勢に面白さや新しさを覚えることも少なくありません。学び方の裁量が増したことで、学生のコンピテンシー(行動・思考特性)は見えやすくなったのではないでしょうか。大変なことも多いオンライン環境ですが、もう少し学生と一緒に楽しみたいと思います。

〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

メニューの開閉