2021.06.22メールマガジン

23年卒の「ガクチカ」は「学業で力を入れたこと」にしませんか

6月後半に入れば、22年卒生(現4年生)の内定出しは、そろそろピークが過ぎます。企業サイドは徐々に内定者フォローに軸足を移し、23年卒生(現3年生)向けのインターンシップに注力しはじめることでしょう。大学サイドで言えば、動向把握が困難なオンライン環境のなかで未内定学生の状況確認&支援、23年卒生への就職ガイダンス、インターンシップ参加学生向けのセミナーなどが同時並行で進行中かと思います。

私が関わる学生で言えば、22年卒生から23年卒生に、ほぼ移行している状況です。そのなかで強く感じているのが「ガクチカ」を不安がる学生の多さです。新型コロナの影響をうけずに、学生生活を過ごせたのは1年間のみ。2年生という最も自由に活動できる期間を、ほぼオンラインで過ごしています。これから23年卒生との交流が増えていく企業サイドには、是非この点をご理解いただきたいと感じます。

2年生になる春期休暇中に感染拡大が進んだため、サークル活動や課外活動では、メンバーと連絡を取り合うタイミングを逃したまま、活動休止になっているケースが少なくありません。慣れないオンライン授業に対応しつつ、一気に増えた課題に追われる学生も目立ちます。大学生に向けられる世間の目もあり、必要以上にストレスを抱え込み、心身のバランスを崩し気味な学生もいます。対人関係の広がりの中でアイデンティティを確立していく青年期には、かなり厳しい環境と言えます。「充実した学生生活を送っていました!」と胸を張って活動内容を言える学生は、極めて少ないでしょう。

対面の交流が制限されていたので、学生生活自体に変化は少なく、コンピテンシー(行動特性、思考特性)を確認できる活動も多くありません。エントリーシートや面接で「学生時代に力を入れたこと」を尋ねても、小さな出来事をそれっぽく仕立てた痛いものになりかねません。無い袖を無理やり振るより、有る袖を振った方が有用でしょう。私がお勧めしたいのは、学生時代を学業に置き換えた「(コロナ禍において)学業で力を入れたこと」という「ガクチカ」です。

選考時に学業に関する質問を活用する動きは、数年前から話題になりつつも、広がりは限定的と言えます。大きなトレンドになりにくい背景には、学業をメインに深掘りするときの「質問ストック」が少ない…という事情があるように思います。大学が発行する成績証明書は、成績と単位数しか記載されていない形式が一般的です。授業内容における詳しい記述はありません。情報が少ないため、どんな質問をすれば、知りたい情報を得られるのか分からない…という企業サイドの気持ちも理解できます。

すぐに対応するのは難しいと思いますが、成績証明の記載内容がより充実すると、選考に使いやすくなるでしょう。各科目の種類(必修、選択など)、成績評価方法(レポート、試験など)、授業形式(座学、グループワーク、実習など)、単位取得率…といった情報が分かれば、面接時の質問も考えやすくなります。科目ナンバリング(科目を番号で分類し、種類や入門~上級などのレベルなどを体系化した仕組み)も進んでいると思うので、その情報を公開するだけでも参考になるはずです。

23年卒生の採用活動では、学業をテーマにした新しいガクチカを加えることで、学生本人の人となりがよく見えてくるでしょう。コロナ禍で制約された学生生活を送っている他学年も、きっと安心するはずです。企業サイドから見ても、ビジネス環境の変化に対応して、学び続けられる人材の価値は高まっています。学業による「ガクチカ」は、今後の新卒採用におけるスタンダード質問として、一考の余地があるのではないでしょうか。

〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

メニューの開閉