2021.06.08メールマガジン
【キャリアセンター長・インタビュー】早稲田大学 キャリアセンター センター長 諸橋信秀 氏
日本を代表する総合大学であり、世界に開かれた研究・文化の発信地として、国内外で存在感を示している。1882年(明治15年)の創立以来、伝統と革新を積み重ね、校友(卒業生)は61万人にもおよぶ。連綿と受け継がれているスピリットは、「Waseda Vision 150(※1)」を通して、いま世界へはばたこうとしている。
今回は早稲田大学キャリアセンターのセンター長である諸橋信秀氏にお話を伺った。
◆キャリアセンターの支援方針
本学キャリアセンターの基本的なスタンスとしては、学業や課外活動など、様々な学生生活を経験して多様な価値観に触れ、そこから学び自分自身を磨き成長していくことを、何よりも大切に考えています。豊かで多彩な経験を通して、卒業後の生き方を自ら考え、見つけていく。実際、多くの学生は、自立的に自身の進路を切り開いています。良い意味で、自分自身で判断ができるよう手をかけすぎない支援が定着していると言えるでしょう。
社会そのものが多様化し、以前よりもキャリア選択の幅は広がっています。一方で、学生が触れ合うことのできる“外の世界”は限定的で、幅が狭くなりがちです。彼らの選択肢を広げてもらうためにも、キャリアセンターの支援の必要性を感じています。自主性を尊重した機会提供が大切なのではないでしょうか。
就職活動は以前ほどシンプルではなくなっています。良い悪いは別として、外資企業による超早期エントリーが実施されたり、インターンシップ中に水面下の選抜が行われたり・・・という現実があります。テクノロジーを活用した新しい選考も増えています。就職活動で求められる情報は多岐にわたり、すべてのニーズに応えるのは困難でしょう。
しかし、知らないことによる機会損失は避けるべきです。教育機関としての秩序は維持しつつ、現状に合わせた情報提供が必要と考えます。
キャリアセンターが個別の学生に、具体的な企業を紹介し、エントリーを促すようなことはいたしません。キャリア選択の機会と情報の提供に注力して、あとは学生自身の判断に委ね、決定を尊重します。とはいえ、毎年12,000人を超える学生が卒業・修了しているため、多様なニーズが生じます。
外国人留学生や障がい学生など、具体的な就職支援を要する学生も少なくありません。英語でのカウンセリングや外部機関との連携など、ダイバーシティを意識した対応にも配慮しています。
◆オンラインを活かした新しい支援の模索
数年前から録画面接など、オンラインを活用した選考が広がりはじめていました。そうした選考に対応するため、新型コロナが広がる以前から、オンライン化の準備を進めていたことが功を奏しました。最初の緊急事態宣言後、比較的スムーズに、キャリアセンター内のサービス機能をオンライン化できたと思います。
特に個別相談については、緊急事態宣言発出の翌日から対応できるようにするなど、職員たちが学生の不安軽減に向け状況に応じて判断し、いち早く対処してくれたおかげです。
21年卒生のオンライン支援は、対面で実施していたサービスを滞りなく実施することを、何より優先しました。22年卒生はスタート時からオンライン中心です。すべての支援プログラムをオンライン化した上で、利用しやすい運営面の工夫に配慮しました。こうした経験やデータを活かして、23年卒生向けには、オンライン化によって見えてきた課題とオンラインならではの新しい企画を進めていきたいと思っています。
対面と比べれば、忙しい社会人でも、限られた時間で協力してもらいやすいですし、海外からの参加も容易になります。従来なら調整が難しい組み合わせの卒業生対談、海外拠点からの配信など、オンラインならではの企画が考えられるでしょう。録画を残すことで、学生の機会損失を防ぐこともできますし、アーカイブとしてデータが蓄積するので、多様なニーズに対応することも可能です。
双方の熱量が伝わりづらい、リアル感が持ちづらいなどのオンラインならではのデメリットがないわけではありませんが、敷居が低くなり気軽にイベント等に参加しやすくなったという点を始め、様々なメリットを最大限に活かすことを大切にしたいですね。
オンライン化への推進もあって、これまで以上に学内外から多くの情報が毎日発信されているため、支援イベントの告知方法にも工夫が必要です。せっかく新しい企画を考えても、学生に知ってもらわなければ意味はありません。職員たちと知恵を絞りながら、試行錯誤を続けています。
◆双方にメリットのあるインターンシップ
学生には、知名度やランキングなどではなく、自らのやりたいことを大切に、就職先を考えてほしいと願っています。「自分は何をしたいのか?」。根本的かつ本質的な動機としっかり向き合い、考える必要があるでしょう。インターンシップは、そのための有用な経験と言えます。しかし昨今は、就職活動とつなげて考える学生が多く、実利的になりすぎているように感じます。
企業側も採用プロモーションを意識した内容が少なくありません。惹きつけるために作り込んだものではなく、リアルな仕事のイメージや将来の自分が成長している姿などがしっかりと描ける就業体験プログラムを望んでいます。
それにより学生は、自らの動機や適性を意識したキャリア選択が可能になるでしょう。企業も自社に適した学生からの応募が期待できます。セルフスクリーニング(学生自らが組織とのマッチングを判断すること)が進むようなインターンシップであることが、お互いのメリットにつながるのではないでしょうか。
企業には理念やビジョンがあり、独自性ある事業が各々展開されています。ゆえに求める人物像は異なり、学生のセルフスクリーニングが進みます。ランキングや知名度といった価値観ではなく、自らの動機や適性によるキャリア選択が進めば、広範囲で適材適所な採用・就職が実現するはずです。学生にとっても、企業にとっても有用なインターンシップであることが大切と考えます。
本学では、キャリアセンター内の「インターンシップデスク」(※2)を通じて、公認プログラム、提携プログラムなど、様々なインターンシップや情報提供をおこなっています。日頃から、数多くの企業の皆さまにご協力いただき、改めて感謝とお礼を申し上げます。
◆新しい新卒採用の必要性
この一年、学生は強い制約のなかで毎日を過ごしてきました。学生同士の交流も、情報共有の機会も限定的だったと言えます。そんな環境下でも、充実した課外活動をおこなっている学生はいます。しかし、思うように動けず、歯がゆい思いをしてきた学生が大半です。
面接の定番質問である「学生時代に力を入れたこと」に不安を感じている学生は少なくありません。また、制約があるなかでの学生生活では、行動特性の評価で差が出にくいようにも感じます。学業への取り組みや工夫、小さな努力など、丁寧に引き出していただけると幸いです。
本学での話ですが、昨年よりもオワハラ(「就活終われハラスメント」の略)の相談が増えています。終身雇用を前提に就職する時代ではないので、社会人になってからも、幾度となくキャリア形成を再考することになるでしょう。
どこで再びご縁がつながるか分かりません。学生が納得してキャリア選択できる環境を与えていただくことが、今後に活きてくるのではないでしょうか。内定承諾書などの“紙”でしばるのではなく、互いの“想い”でつながっておくことが、長期的な関係構築になると感じます。
個人的な意見になりますが、新卒採用そのものが、これからの時代に適した新しいスタイルに変わるべきだと感じています。コミュニケーション力といった要素も大切ですが、そればかりでは多様性が望めません。
学生も、知名度やブランド力に影響されたキャリア選択では、モチベーションは保てないでしょう。保護者の意見に従った決断でも、仕事に就いてからの踏ん張りがききません。企業も学生も保護者も、当然私たち大学も、大きな視点で新卒採用をとらえ直すタイミングと言えるでしょう。
本学として、取り組むべき課題は山積しています。学生のよりよいキャリア選択のため、まずは自分たちができることから注力していきたいと思います。
インタビュアー〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕
※1
Waseda Vision 150 創立150周年に向けて
※2
インターンシップデスク
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キャリアセンター
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