2020.10.27メールマガジン

キャリアセンター長・インタビュー 日本女子体育大学 キャリアセンター 課長 硲 美穂氏

宮城県で生まれ育った文学好きな少女は、准教員検定に15歳で合格。東京女子高等師範学校文科を卒業し、金沢の石川県立高等女学校に赴任したものの、国語教師のはずが、もっとも苦手な体操を任されることになる。

彼女はこの予期せぬキャリアチェンジを受け入れ、イギリス留学を経て、精力的に「女子体育教育」に取り組んでいく。1922年(大正11)には二階堂体操塾を創立。創立者二階堂トクヨが41歳のときである。
今回は、日本女子体育大学のキャリアセンター課長、硲 美穂氏にお話を伺った。

◆多様な選択肢を支えるキャリア支援
本学は「体育を中軸に据えた全人教育」を建学の精神(※1)として、社会で活躍できる多様な能力を持った女性の育成を目指しています。体育学部4学科(スポーツ科学科、ダンス学科、健康スポーツ学科、子ども運動学科)があり、1学年500~550人の女子学生が学んでいます。

学部の特性上、アスリートとしてやっていきたい、ダンスで身を立てたい、という希望を持った学生がいます。それが簡単でないことは、たいていの場合、本人も分かっています。その上で、迷い悩んでいるケースが多いので、まずは本人の話をじっくりと聞き、必要に応じて先輩事例などを伝えています。後悔のないキャリア選択をしてもらうため、自ら意思決定することを大切に、必要な支援を心掛けています。

一人ひとりの顔が見える規模なので、それを活かして全員に個別面談をおこなっています。就職相談は「教員」「公務員」「幼児教育」「民間企業」など、職員が志望分野別に担当を受け持つ体制なので、よりきめ細かい対応が可能です。

各学科には、キャリアセンター委員会に所属する教員がいて、私たちと連携して支援を進めています。学科別にキャリア選択に特徴があるため、教員の方がより具体的な就職情報や人脈を持っているケースもあります。互いの情報を活かしつつ、個に寄り添うことを何よりも大事にしています。

◆民間企業への就職支援
学生の就職先の約7割は「民間企業」です。スポーツビジネスの広がりにより、教師以外のスポーツ指導者の職に就く学生も増えていますが、もっとも多いのは一般企業への就職です。

一般企業の就職支援で、私たちがもっとも苦慮するのは、いかに学生の視野を広げるか・・・という点です。「スポーツに関わる仕事に就きたい」と考える学生が多いため、例えばスポーツ用具の一部を製造・販売しているなど、スポーツとの関わりをきっかけに、学生のキャリア選択が広がるような企業紹介を意識しています。

「キャリア・カフェ(※2)」という主に低学年向けのキャリア支援イベントも実施しています。自分たちが知らないだけで、スポーツと縁のある企業は、世の中にはたくさんあることに気付くきっかけとして役立っています。

好きなスポーツに邁進している学生にとって、就職活動を支援するキャリアセンターは身近な存在とは言えない部分もあります。だからこそ、できるだけ敷居を低くして、支援イベントに参加してもらえる工夫をしています。彼女たちの興味関心が高そうなプログラム(例えば、マナーやお化粧・服装関連など)からスタートしているのは、そのためです。

部活やクラスのネットワークが強いため、一度参加してもらえれば口コミ効果が期待できます。学生同士のつながりの強さは、本学の良さのひとつです。

◆コロナ禍の学生を支える
東京オリンピック・パラリンピックの関係で、もともと21年卒は例年よりも早い就職支援プログラムを組んでいました。それが新型コロナ対策として功を奏したというのも変な話です・・・。その後は、急遽オンライン支援に切り換えるなど、対応に追われました。

6月中旬以降から、実技科目の対面授業も少しずつはじまっています。後期からのキャリアセンターの学生支援は、対面とオンラインが半々といった感じでしょうか。学生個々の状況やリクエストに応じて、ハイブリッドな支援をおこなっています。

今年は去年よりも、就職活動を継続している学生が目立ちます。公務員試験の遅れにより、まだ進路が決まっていない学生や、教育実習が春から秋に変更になり、いま実習に参加している学生も少なくありません。秋から冬にかけて、就職活動が思うように進められない状況が生じています。企業の方々には、追加募集のご連絡やスケジュール面でのご考慮をいただければ幸いです。

内定取り消しを心配する声が多いのも、今年の特徴でしょう。企業から連絡がないことで、不安が助長されるようなので、メール連絡などを定期的に入れていただけるとありがたく思います。

◆スポーツ人材としての魅力
本学の学生は、スポーツを通して学びを得て、社会に貢献できる人材へと成長していきます。日々トレーニングを積む習慣は、ピュアさというか、真面目に物事に取り組む姿勢を育みます。同時に、スポーツはルールが明確なので、ときとして白黒ハッキリさせたがる傾向も見られます。実社会は不確実なことが多く、曖昧さを受け入れることも必要です。

こうした対応力は、就職活動を通して鍛えられ、成長しているようにも感じます。勝ち負けではないキャリア選択の過程で、彼女たちらしいピュアさを活かした対応力が身についていきます。

スポーツを通して得た彼女たちの強みは多彩です。レギュラーになれない、思うような結果が出ない・・・といった挫折経験を活かし、PDCAを回しながら自らを向上させられる。一見単調な基礎練習を繰り返すことの意味を知っている。部活動によって人間関係の経験値が高いなど、自分たちが当たり前にやってきたことのなかに、多くの強みがあります。しかし、残念なことに、自分たちの強みに気付いていない学生が多くいます。

スポーツ人材としての魅力に気付いてもらい、自らの特性をより活かしたキャリア選択をしてほしい。それが実現するような支援を、今後も目指していきたいと思っています。

※1 建学の精神
https://www.jwcpe.ac.jp/college_info/idea/spirit/

※2 キャリア・カフェ
https://www.jwcpe.ac.jp/career/cafe/

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<大学データ>
●日本女子体育大学
〒157-8565 東京都世田谷区北烏山8-19-1
https://www.jwcpe.ac.jp/index.html

キャリア支援課
Tel:03-3300-2279
Fax:03-3308-6772
e-mail:shushoku@jwcpe.ac.jp
https://www.jwcpe.ac.jp/career/company/

[学部]
体育学部
スポーツ科学科、ダンス学科、健康スポーツ学科、子ども運動学科

[大学院]
スポーツ科学研究科

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