2019.09.10メールマガジン
学生たちの見えない就活が続いている
■9月上旬現在、20卒の採用活動は、すでに終了したといってよいが、まだ採用計画未達のため採用活動継続という企業が少なくない。学生の就活も昨年より速いペースで進行したものの5月以降、内定率は伸び悩むことになった。そこで、今回は、7月中旬の内定状況について当社の「学生モニター調査2019年7月」(以下、本調査)を参照しながら内定率の伸び悩みと今後の学生の動きを分析してみよう。
▼本調査によれば、7月中旬には、当社の就職サイトに登録している学生の83%が内定を獲得しているという。この内定率は、絶好調のように思えるが、昨年対比では、マイナス8ポイントで、内定率は伸びなかった。そのため就活を継続する学生は、昨年より増えることになった。だが、これは表面上の数字だけかもしれない。学生に焦りや悲壮感が少しもないからだ。
▼学生の今後の活動予定がその疑問を解く手がかりとなりそうだ。本調査では、7月中旬の段階で就職先が決まっていない16.7%(昨年は8.3%)の学生は、当然のことながら「未内定なので就活を継続」と回答していたが、内定を持っている学生はどうか。明快に「就活は終了した」と回答した学生は、65.7%だった。その一方、就活を止めない学生が増えている。「内定先に不満はないが、就活を続ける」という偽装内定学生が13.0%、「内定先に不満なので就活を続ける」という不満学生が4.7%いる。これらの数字から、当社の就職サイトに登録している学生たちは、未内定者を含めて現在も就活を継続している学生が34.4%もいるということになる。これは、就職できないのでなく、売り手市場の中で学生たちが、就職を楽観視し、もっと良い企業への応募のチャンスを待って就職先を決めないからなのだ。これが7月中旬の就職内定状況の実態なのである。
▼企業の採用担当者にとって内定者の心強い回答は、「就活は終了した」という学生だが、その理由を聞いてみると、「第一志望だから」というのが最も多いが、その比率は、48.2%と半数。売り手市場といわれる割に少ない。これでは、内定先より魅力的な企業からオファーがあったり、内定先に不満や不安が生じたりしたら他社に転じることにもなりかねない。二番目に多い回答は、意外にも「希望とは違うが、納得する企業だった」という回答で27.9%。これは、嬉しい回答だろう。そこまで採用担当者の熱心な情報提供やフォローがあったことが評価されたからだ。「第二志望企業だった」という回答は、11.7%と三番目だった。
就活を終了した学生に「入社の意思を固めた時期」を聞いているのも興味深い。最も多かったのが6月上旬で29.4%、以下、6月下旬、7月上旬、5月下旬と今年の内定のテンポを反映しているが、3月以前という回答に注目したい。これが6.6%もあった。昨年より2ポイントも多い。採用活動が早期化していることがわかる。さらに早期内定学生の内訳にも注意してほしい。文系学生の4.2%に対して理系学生が13.0%と圧倒的に多かったのである。理工系の早期採用チャネルの存在を示している数字といえよう。
▼売り手市場ということからここ数年、内定辞退が増加してきたが、昨年は、企業による内定の意思確認の面談が増え、なかなか内定を出さない傾向が強まった。そのため正式内内定?が6月上旬にずれ込み、学生の内定保有率は、平均1.9社にダウンした(昨年は2.1社)。この企業の慎重なスタンスに対応して学生側もじっくり企業を絞り込んで、内定受諾時期を延期すると抵抗したのである。これが採用活動の長期化、内定時期の遅れをもたらした。内定辞退の理由も確認しておこう。7割の学生が「第一志望でない」からというのは当然として以下、多い順にあげれば労働条件(賃金・年収)、事業内容、社風、勤務地。このうち社風以外は、事前の企業研究で承知していたはずだからその内定は、滑り止め企業だったからだろう。現在の内定先企業への不安も見逃せない。これも多い順にあげると「自分の能力が通用するか」「人間関係」「勤務地」「配属部署・職種」という。内定者フォローの課題が見える。内定承諾書の効力に対する学生の理解も興味深い。内定ピークの5月から6月、内定を出すにあたって企業は、学生に今後の就活の終了を促す「内定承諾書」の提出を求めるのは例年のこと。内定を持っている学生の7割が「内定承諾書」の提出を求められたと報告している。2割の学生が「入社しなくてはならない」と思い、5割の学生は「可能な限り入社しなくてはならない」と理解している。多くの学生はやはり真面目なのだ。それに対して「断ることも視野に入れて提出」という学生が2割、「とりあえず提出」が1割弱だった。承諾書を出しながらも就活を続けるしたたかな学生たちである。
▼最後に本調査で最も注目したいのは新卒紹介の登録状況である。内定ピークを過ぎた7月中旬という時期だからだろうが、この時期に登録している学生が半数近い44.7%もいた。この登録者には、当然、内定を持っている学生が含まれている。内定し、就職先がありながらほかの企業に就職できるチャンスを期待しているのである。こうした新卒紹介については、新傾向として学生の登録時期の早期化が目を引く。その推移を見ると就活を意識し始めた3年生の4~6月に早くも21.6%の学生が登録、就活が本格化した今年の1~3月には、26.9%となった。この新卒紹介について学生たちは、就活で苦労したくない、自分がどの業界、企業に向いているかわからない、企業からスカウトされたい、就職相談をしたい、といった認識で登録するという。数年前には、新卒紹介といえば、就活に出遅れた学生が、秋になって登録するというケースが多かったが、今年は大きく変わった。就活スターとともに登録しているし、彼らは、新卒紹介会社から魅力的な企業からオファーがあれば早期であっても、内定後でも転じるつもりだ。そのため「今後も企業にエントリーするのか」いう問いに対しては、学生の5人に1人は「する予定」と回答していた。学生たちの就活は、内定後も見えない就活として長期化、いわば通年化しつつある。採用担当者は、まだまだ安心できないようだ。
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