2016.12.15メールマガジン

新入社員にはキャリア教育が必要だ

入社して半年経た新入社員たちは、働き方や自分の将来をどう考えているのか、そんな興味深い調査が、昨年末、日本生産性本部から発表された。これは、「2015年度新入社員 秋の意識調査」というもので、対象は、同社の春の研修に参加した新入社員264人を対象に入社半年後の昨年10月から12月にインターネットで行った調査だ。

▼入社後、学生たちは、どれくらい管理職をめざしているのか。男子では、62.0%、女子では、27.0%だった。5年前と比較すると男子は、65.5%→62.0%と後退している。しかも多くは、部課長で十分という。

これは、内定中だった春の調査でも「人並みで十分」という回答が最も多かったことに対応している。だから将来、トップを目指す新入社員は年々減少している。元気のよい女子新入社員はどうか、管理職志向は、27.2%→27.0%と期待ほど伸びていない。

このように新入社員が管理職に「なりたくない理由」を聞くと、「自分の自由な時間を持ちたい」からだという。次いで「組織に縛られたくない」「専門性の高い仕事がしたい」「責任のある仕事はさけたい」となる。この傾向は、入社前の調査でも同様で「ゆとり世代」の特徴がストレートに出ているといえよう。

では、「管理職になりたい理由」は、何か。「高い報酬を得たい」が圧倒的に多かった。キャリアや仕事の面白さより高い報酬を得たいというのが第一の理由だ。一昨年の調査では、「さまざまな業務に挑戦したい」がトップだったことからの大変化だ。

どうも仕事の面白さや会社キャリアの形成より「高い報酬」へのこだわりの方が強いようだ。これは、女子も同様だった。

▼自分の職業観あるいは、キャリアについては、どうか。設問は、「自分のキャリアプランに反する仕事を我慢し続けるのは無意味だ」ということに同意するかを聞いた。

「そう思う」とする回答を過去5年間の推移でみると、26.3%→26.5%→42.4%→37.5%→43.6%。今回が過去最高となった。新入社員の考えるキャリアプランの意味はあいまいだが、回答者の多くは専門性の深化や資格取得を考えているようだ。営業や販売の経験がキャリア形成のキーになることを新入社員は、理解していないようだ。

▼前の質問に関連して「残業が多いがキャリア形成できる職場」か「残業が少なく自分の時間が持てる職場」か、を聞いた。その結果は、「自分の時間が持てる職場」が、81.1%と過去5年間で最高値だった。この質問は、入社前の春(まだ学生)にも行っているが、その数字は、67.2%だった。それが、秋には、81.1%に跳ね上がった。

入社してみて想像以上に仕事の密度が高いことや時間管理が十分に出来ていないことが推測されるが、新入社員たちがマイペースの人生を望み、会社の仕事に埋没せずキャリアは、自分で築くという自立した考え方を選択したとも読める。

▼淡白といわれるゆとり世代だが、案外、こだわるのが給与。それだから管理職になりたい理由も「より高い給与を得るため」という回答が多かった。しかし、給与の決め方については保守的。

5年前と比べると年功型が38.3→43.2と増加しているし能力主義を望むのは、61.7→56.8と後退している。若い世代ほど人事制度の改革には消極的で競争したがらないようだ。

▼さまざまなメディアを使った新入社員のコミニュケーションについても聞いている。なかでもツイッターをはじめSNSは、若者の間に広く浸透している。そこで本調査では、「SNSのアカウントを持っているか」、「同僚・先輩・上司からSNSで友達申請がきたとき、どのように対応するか」を聞いている。

SNSのアカウントについては、92.2%の新入社員が持っている。これは、就活がネット中心だから当然だろう。後の質問は、職場でのつながり”を大事に思う気持ちもあるだけに微妙な回答ぶりだった。

申請を受け入れる順位は、同僚、先輩、上司と予想通りだが、上司については、申請を断るが17.4%、本当は断りたいが受け入れるが27.8%、承認が54.8%だった。これに対して同僚を、受け入れるのは、83.0%、断るのは、8.7%だった。同僚との絆は強い。

だが、仕事や人間関係、顧客への対応などは、同僚だけでなく上司や先輩と日常的にコミニュケーションすることで解決し、ストレスに陥ることが避けられるのではないか。自分の弱みを見せたくないとか、職場と私生活を分けたいという気持ちも強いだろうが、この結果は、心配だ。

▼では、こうした新入社員意識調査の結果を人事、採用担当者は、どう受け止めたらよいのか。まずは、新入社員教育の見直しである。これまでは、会社生活におけるマナーや報連相などのビジネスルール、業務知識の周知だったが、今後は、会社におけるキャリア形成の目標、キャリアパス、管理職の権限と責任などを新入社員教育として導入してはどうか。

第2は、キャリア形成とライフプランを同時に考えさせる教育体系の導入である。そのためには、キャリアと昇進、賃金、教育・研修、福利厚生制度などを一体的に時系列で理解してもらうことだ。個人によって差が大きいが、大事なテーマだ。

3番目は、キャリア教育は、新入社員だけでなく社員の各層にも波及させることを検討してほしい。これまでは、退職準備としてのキャリアプランはあったが、これは、目的が違う。これからは、若手だけでなく中堅、管理職、それぞれの節目ごとに当該企業特有のキャリア教育が必要な時代になってきたように思う。 (目)

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