2015.11.17メールマガジン

恒例の大学ランキングを読む

11月7日、「週刊ダイヤモンド」は、恒例の大学特集を組んだ。同誌は、毎年、さまざまな指標で大学を分析、数値によって大学をランキング化している。

こうした大学特集は、近年、経済誌から週刊誌まで頻繁に取り上げられるのはビジネスマンばかりでなく、多くの人たちが大学の教育内容や就職状況、社会的役割に関心を持っているからだろう。

もちろん、採用担当者にとっても見逃せない記事が少なくない。そこで、本号では、これらの特集記事から採用、就職に関係のある大学の就職傾向やトピックスを取り上げみよう。

▼まず、「週刊ダイヤモンド」。その特集タイトルは「最強大学ランキング」。同誌では、世界で活躍できる人材を育成し、生き残ることのできる大学を3つの指標(グローバル教育力、就職力、研究力)でランキング化した。

そのベスト8は、東工大、東北大、京大、国際教養大、名大、阪大、東大、九大。理学部や工学部、医学部を持つ旧帝大が研究力(研究資金調達額や論文数)で他大学に差をつけたからだ。ここでは、就職力(グローバル企業就職率)のランキングを見てみよう。

豊田工大、東工大、国際教養大、一橋大、慶大、九州工大、名工大がベスト8。これまでの就職力ランキングとかなり違う。その理由は、これらの大学が、海外売上高比率の高い製造業に多く就職しているからだ。そのため理工系大学のポイントが高くなっている。

同誌の特集の中で光るのは、10年前から始まった大学のグローバル化と国際系学部の現状を取り上げていることだ。1953年に設立された国際基督教大学に加えて国際教養大学、上智大学、早稲田大学、立命館アジア太平洋大学など設立されて10年前後になる4大学の国際教養学部の現状を比較しているのが良い。

さらにグローバル関連学部を擁する64大学・学部について偏差値、外国人留学生比率、就職率、語学能力基準などを一覧にして紹介している。グローバル採用をめざす企業にとっては必読の大学情報といえよう。

このほか、同誌では、
1.大学の国際競争力を高めるために国が財政支援を行うスーパーグローバル大学支援事業(SGU)で一橋大、神戸大が落選した経緯
2.国際系学部の先端を行く秋田の国際教養大学の志願者が年々減っている背景
3.来春、新設される千葉大が国際教養大のライバルになる理由
といった記事がなかなか読ませる。ランキングよりこちらの情報の方が有益だ。

▼週刊東洋経済で特集した「本当に強い大学2015」(5月18日臨時増刊号)も充実していた。前述の「週刊ダイヤモンド」と違ってグローバル化、就職、入試、大学経営、ブランド戦略、講義・学生生活、会計という7つの広範なテーマから総合的に大学を分析している。その角度からみた強い大学とは、東大、慶大、早大、阪大、京大、名大、東北大、九大などだった。

しかし、この指標では、大規模な総合大学が有利とみえ、上位は、旧帝大や早慶が上位を占めた。同誌の場合、「就職」は、どうランキング化しているのか、上場企業役員数、主要400社への就職実績、就職率、専門職に強いかどうかの面から評価している。

就職率とは、卒業生(大学院進学者を除く)に対する就職者率を学部系統別にランキング化したものだ。例えば、経済・経営・商学系では名大、静岡県立大、一橋大の順。法律・政治系では、青森中央学院大が一橋大、名大を抑えてトップになったが、この大学は、経営法と看護の2学部。卒業者数は、150人程度だからきめ細かい就職支援ができた、ということだろう。それだけに就職に関心の高い受験生や父兄などには知り
たい情報といえるが、就職の質にこだわる採用担当者にとっては、あまり関心の持てないランキングだろう。

同誌で注目したい記事は、3つある。
1.これまで留学したがらなかった学生が、外向きになりつつあるという背景
2.就職のしやすさ、女子学生を取り込めるということで看護、介護、医療技術、リハビリ、保育などの大学が新設、増設ラッシュであるという現状
3.専門職に強い大学の資格別の就職率(就職者数でない)をランキング化
などだ。

▼就職先ということでは、「サンデー毎日」11月15日号が採用担当者にとっては、興味深い。同誌の特集は、有名企業400社への就職率、就職者数をそれぞれランキング化したもの。

就職率トップ10は、一橋大、東工大、豊田工大、慶大、国際教養大、電通大、早大、阪大、東外大、九州工大。10位以下30位内までをみると、東京理科大、名工大、農工大、など理工系大学が上位に入っている。

私大では、上智大、ICU、学習院大、同志社大、立教大、青山学院大、関学が入っている。これらの大学は、順当なところだろう。目に付くのは、名門女子大の活躍ぶり。学習院女子、東京女子、聖心女子大、日本女子大、津田塾大、御茶ノ水女子大も30位以内に入っている。金融業界だけでなく大手製造業でも大卒女子の採用が積極的なったからだろう。

首をかしげるのは、京大15位、東大の23位。理由は、有名企業への就職率が低いのである。その理由は、公務員、資格浪人、ベンチャー、コンサルテイング企業への就職者が多いからだ。なお、31位に筑波技術大学が入っている。同大学は、聴覚または視覚に障害を持つ人が学ぶ3年制国立大学である。

このように、このランキングは、ほぼ世評通り。躍進した大学も見当たらず、残念な結果だった。それにしても大学別採用数を見るとメガバンクが、有力大学から大量採用していることがわかる。例えば、みずほFGの場合、早慶で258人、MARCHで279人、関関同立で122人。三井住友銀行も同様で早慶で189人、MARCHで214、関関同立で376人、合計779人だった。採用担当者の感想は様々だろう。

▼このほか、アエラは、1月26日号で「ランキングでみる大学力2015」として18大学の上位就職先を掲載していた。そこでは東大の就職先としてDNaやマッキンゼー、アクセンチャーに多く就職していることを紹介していた。このように各誌の大学特集は、相変わらず有名企業への就職者数や就職率が重要視され、ランキング化、その結果、今年も相変わらず旧帝大、早慶が就職市場を圧倒、理工系や女子大も採用ブームに乗り、ランキング上位を占めていることが確認された。

[15.11.17]
就職情報研究所 顧問 夏目孝吉

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