2015.10.22メールマガジン

「指針」で学生の就活は、長く、遅く、暑かった

安倍総理の肝煎りで実施された「指針」は、初年度において早くも破綻、各方面から見直し論が続出している。産業界の声は別の機会に譲り、今回は、最大の被害者ともいえる就活学生の声を当社のモニター調査から紹介しよう。

▼まず、「指針」を前向きに評価する学生の声。

・「企業と会ってから選考が始まるまでに猶予があるためじっくり企業研究する時間があったのは良かった」

・「授業やサークル活動をしっかり終えた時期だったので、自己分析や自己PRのエピソードが深いところまで書けた」

・「海外留学していたが、就活時期が3月からに変更になったことで、乗り遅れることはなかった」

・「早期からの就活に乗り遅れた人間にとって期間が長かったので逆転のチャンスが多くあった」

・「公務員試験に失敗しても、まだ夏には、民間企業の選考が残っていると思うと安心できるし、挑戦する気持ちになれた」

・「従来のような寒い時期の就活ではなかったので、重いコートを着ることなく身軽に活動できたのは良かった」

と「指針」を評価する学生が相当数いた。しかも学生たちが指摘したメリットは、まさに政府が指針において目標としたことである点に留意する必要があるだろう。

▼これに対して「指針」が就活を混乱させ、デメリットとなったと回答した学生の数は、全体の7割を占めた。

・「情報解禁から選考までの間が開きすぎて困った。とくに志望する大手企業の選考がなかなか進まず、内定出しが遅かった。そのため、やむなく他業種の企業や中小企業に保険をかけた。時間の無駄だけでなく、内定辞退で企業にも迷惑をかけてしまった」

・「就活のスケジュールが長く遅いためモチベーションが維持できなく、第一志望だった大手企業の選考までも待ちきれず、早期に内定を頂いた準大手企業の熱心なフォローに根負けしてしまった」

・「大手企業は、セミナーやイベント、学内説明会、セミナーなど8月選考に間に合わせた内容だったが、経団連非加盟の企業は、従来通り4月選考だったため企業からのアプローチやサポートがバラバラだったので混乱した」

・「8月選考開始といいながら4月末にエントリー締め切りだったり、6月受付のコースがあったりで、怪情報が氾濫して、情報に振り回された」

・「6月、7月には会社説明会が激減、この期間が無駄になった」

・「業界や企業によってエントリーシートの締め切りや選考の日程が、重複して、どれが選考なのか、就職サイトにも出ていなかったため、就活をしていてもよくわからなかった」

・「選考が、夏にずれたので台風の影響もあり説明会が延期されたり、交通機関がストップしたりでスケジュール調整に苦労、疲れた」

・「クールビズ歓迎という企業に訪問しても他の企業と掛け持ちをしているので、結局、無難なスーツで就活をした。酷暑の中での就活は、本当に疲れた」

★このように学生にとって今年の就活は、長い、遅い、暑いということでさんざんだった。

なお、本質的なことではないが、気になる回答もあった。それは、夏選考のメリットであるクールビズの採用が不徹底だった点である。軽快な夏服で閑散としたビジネス街で涼しい採用選考が想定されていたが、実際には、多くの学生はスーツ姿であり、台風による交通混乱の中で就活をしていた。「世間はクールビズであるにもかかわらず、企業による服装のルールが曖昧だったため夏にスーツを着て大汗をかく毎日となった
のである。さらに誤算は、酷暑と台風の襲来も学生には気の毒だった。

▼では、学生は、こうした採用のスケジュールについてどのような考え方、改善案を持っているのか。感想レベルだが聞いてみよう。

・「大企業の選考を3月以降として、中小企業は、その後からにすることを明確にルール化する」

・「3年生の10月から就活をスタートするとよい。そうすれば、年末までには就活が終わり学業や卒論にも支障がない」

・「説明会は3月から、選考は6月からにしてほしい」

・「どう決めても守れないのだから大学1年生からインターンシップを行い、採用選考をフリーにしてもよいのではないだろうか」

▼こうした学生たちの意見をまとめると、「指針」については、次のように総括できるだろう。情報解禁は、3月からが望ましく、選考開始は、間延びすることなく情報解禁後3カ月程度、6月からの選考開始が妥当だろう。「3月情報解禁、6月選考開始」これが今年の就活をした学生たちの「指針」改善案であり、結論のようだ。

なお、「指針」については、日本商工会議所、経団連など企業側から強い見直しの意向が示されているが、政府が決めた「指針」を1年で撤回するという失態に、どう政府のメンツを立てるかという難問が残っているが、うやむやに改訂となりそうだ。

[15.10.22]
就職情報研究所 顧問 夏目孝吉

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