2015.03.31メールマガジン
不安と不信でスタートした採用活動2015
◎インターンシップが牽引役に
16卒の採用活動が3月1日にスタートして1か月、15卒の入社式が終わった途端に、内定の噂が飛び交い、早くも採用活動は、ピークを迎えようとしている。そのためテレビや新聞では、「すでにヤマ場?」という報道が氾濫している。本当にそんなに早いペースで就活そして企業の採用活動が進行しているのか、「指針」によって昨年より3か月繰り下げられたにもかかわらず、こうした早期化が噂されるのはなぜか。その牽引役は、インターンシップだという指摘が多いが本当か。こんな疑問を当社のモニター調査*を手がかりに分析してみた。
*当社のモニター調査について
このモニター調査は、当社のブンナビ会員を対象に2月にインターネットで行われたもので全国各地632大学の学生、742人が回答したものである。なお、昨年との対比では、15年卒は、就職情報解禁日が12月1日だったので一昨年の11月の調査結果を使用している。
▼まず、学生たちの就活は、どこまで進んでいるのか。同調査によれば、2月末までに学生が行った就職活動では、「自己分析」が、昨年よりやや増の67.3%(昨年は、62.8%)だったが、「企業へのエントリー」は、43.4%で23.8%増、「学外の就職イベント参加」が64.3%で18.4%増、「業界・企業研究」は、12.2ポイント増の63.0%とそれぞれ大幅に増加、学生たちの就活が、早いペースで始まっていたのを裏付けた。とりわけ2月段階で「企業へのエントリー」が、43.4%に達し、昨年同期より23.8ポイントも高くなった点だ。企業の採用情報が解禁される前にもかかわらず学生たちの行動が具体的になっている。もちろん多くの企業側が、仕掛けていたからだろう。
▼では、インターンシップへの参加は、どうだったか。従来から主流だった夏のインターンシップ(6月から9月)は、46.1%と前年並み(45.5%)だったが、冬のインターンシップ(10月から2月)が急増した。といっても昨年は、件数が少なく、同調査では、集計していなかったが、今年は、冬のインターンシップに参加した学生が、36.9%にも達したのである。この数字は予想以上だった。しかもその期間の短さに驚かされた。冬インターンシップ参加学生の80.4%が1日のみという。さらに2日から1週間(実質5日)程度というのが34.2%、1週間以上が0.5%だった(集計は複数選択)。時期が時期だけに長期間は無理だろうが、ほとんどが1Dayインターンシップだった。企業のねらいが、どこにあるかはいうまでもない。大学側からは、会社説明会にすぎないのではないか?と批判が出たのも仕方がない。
▼だからインターンシップ参加学生に対する企業のフォローも興味深い。同調査によれば、夏、冬インターンシップ参加学生のうち20.7%、が2月時点で「選考中・内定」という次の段階に進んでいる。さらに61.6%の学生は、「参加者限定の懇親会に参加」+「電話・メールなどで連絡」と関係を継続している。「とくに連絡はない」という学生は、41.5%だった。これは採用に関係がない純粋のインターンシップだったという理解もあるが、すでに選考が行われて対象外になったため縁がなくなったという見方もある。どうやら一部の企業にとって冬インターンシップは、「指針」への対応策としてギリギリの防衛策だったのかもしれない。
▼こうしたインターンシップの現状を学生たちは、どう思っているのか。同調査では、学生のインターンシップに対する意見と期待を紹介している。「選考とつながっていない」ことを望んでいるのは21.8%、「つながっていてほしい」という学生は、44.5%だった。学生の多くは、インターンシップが、選考のツールであることを不安ながらも期待している。これは、学生たちが、インターンシップの開催時期、開催日数、プログラム内容から企業のねらいがどこにあるのかを承知しているからだろう。とりわけ3年生を対象に冬に開催する短期のインターンシップ(1日から5日間)は、採用選考の一手段であることは誰もが知っている。それだけに同調査では、インターンシップが「指針」のもとでは有力な採用手段であることを示したのである。
もっとも今年は、人材ブームの到来、優秀人材の早期確保、夏選考開始への不安、企業側の足並み不統一などに加えて「指針」初年度だったこともあって企業が不安に駆られて採用活動を前倒ししたのかもしれない。とくに今年は、採用増が予想されるだけに採用担当者に「取りこぼし」は許されないからだ。だが、採用活動は、8月まで続く、内定を保持したまま就活を続ける学生も少なくない。勝負はこれからだ。
[15.03.31]
就職情報研究所 顧問 夏目孝吉
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