2024.11.05メールマガジン
キャリアセンター長・インタビュー】東京農業大学 キャリアセンター センター長 徳永 早苗 氏
1891(明治24)年、徳川育英会育英黌に農業科が創立された。
生みの親は、明治政府で大臣を歴任し、北海道開拓にも携わった榎本武揚氏。1893(明治26)年には経営母体であった育英黌から独立し、東京農学校を設立した。1911(明治44)年に私立東京農業大学と改称し、農学者・横井時敬氏が初代学長に就任。『稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け』などの言葉を残し、「実学主義」の基礎を築いていった。正門に掛かる門標(校名)は棟方志功の揮毫で、応援歌『青山ほとり』にあわせて踊る「大根踊り」は多くの人に知られ、愛されている。
今回は、東京農業大学、キャリアセンター長・徳永早苗氏にお話を伺った。
▼三位一体のキャリア・就職支援
本学のキャリア・就職支援は、「キャリアセンター」「学科」「研究室」が互いに連携しながら、三位一体となって進めています。全学的な進路支援の方向性は学長の中長期計画に基づき「キャリア戦略委員会」で策定され、各キャンパスには「就職対策委員会」が設置されています。各学科から教員1名が参加し、各キャンパスでの支援を具現化していきます。情報共有、意見交換の場となっている点が特徴と言えるかもしれません。
学科によっては、独自の業界セミナーなどを実施することもあり、こうした取り組みを就職対策委員会で共有することで、他学科でも取り入れたり、キャリアセンターも参考にしたりすることがあります。キャリアセンター主催のプログラムを事前に伝えておくことで、各学科長に周知の依頼もしやすくなります。密な情報共有が「キャリアセンター」と「学科」のスムーズな連携に繋がっています。
3年生になるとすべての学生が研究室に配属されます。研究室の指導教員と学生の距離が近いため、社会人として求められる人間性を磨く場にもなっていますし、大学院生の先輩たちとの共同作業ではマナーや社会性も身に付いていきます。研究室はキャリア発達を促す重要な場と言えるでしょう。
しかし、指導教員が全員のキャリア・就職支援をすることは困難です。教員から依頼されて就職活動に関する情報提供をすることもありますし、キャリアセンターでの個別支援が適した学生の対応依頼を受けることもあります。
私自身、学部長や学科長、研究室の指導教員といった先生方と、できるだけ直接話をする機会を持つようにしています。こうした学内ネットワークを大切にすることで「キャリアセンター」「学科」「研究室」によるキャリア・就職支援が成り立っているように感じます。
▼キャリアセンターの役割
キャリアセンターの大きな役割としては、2つあると考えています。1つは「学生相談」です。日々の大学生活を理解し、授業の履修状況なども把握できる職員が相談に乗ることで、はじめて見えてくる支援アプローチがあります。もう1つは「学内企業セミナー」で、学生と企業の出会いの場をプロデュースする意義は大きいと思っています。
1つ目の学生相談では、就職だけでなく進学など、あらゆる進路相談に対応しています。気を付けているのは、キャリア選択の誘導をしないことです。意思決定するのはあくまで本人で、私たちは支援する伴走者です。本人の考えや価値観を整理していきながら、自分自身の立ち位置を確認してもらうことを意識しています。
学部3年生、大学院M1、D2生を対象とした進路面談は、6月・10月に実施しています。この面談から不安解消に繋がったり、進路の方向性が見えてきたりすることがあります。キャリアセンターでできることを伝え、利用の促進に繋げます。
2つ目の学内企業セミナーですが、ありがたいことに多くの企業の皆様から参加希望のご連絡をいただいております。しかし参加できる企業数が限られているため、本学求人サイト「農大キャリアナビ」に登録している企業の方など、一定の基準を設けて参加の依頼をしています。
学生の視野を広げるため、学生には見えにくいBtoB企業を紹介することにも注力しています。昨年はキャリアセンター主催で『つながる業界研究会』というガイダンスを実施しました。食品業界やIT業界、農業業界といったテーマで、川上から川下までの企業を関係づけて紹介することで、学生の理解はグッと深まります。学生が興味を抱きそうな入口から、知らなかった分野へと関心を広げていってもらうことを意識しています。
▼教室内と教室外におけるキャリア発達
キャリアセンターは正課のキャリア教育にも関わっています。初年次教育として実施される「東京農業大学入門」では、キャリアセンターが1コマを担当しており、私自身が学生に向けてメッセージを送っています。
就職がゴールではなく目標を決めて、「大学で何をしたいのか」「そのために何をすればよいのか」といった問いかけから、自身の大学4年間をイメージしてもらい、本学には「こんな機会もあるよ」「あんな活動もできるよ」といった説明をしています。充実した大学生活をスタートさせるためのスイッチを押していきたいですね。
2年生対象の「キャリアデザイン」では、授業設計から講師選定、運営などをキャリアセンターが担っています。本学卒業生から様々なキャリア選択を知ってもらい、自身の可能性に気づいてほしいと願っています。
教室外にもキャリア発達につながる学びの場が多くあります。例えば、各キャンパスで実施される本学の「収穫祭」(※2)は学生主体で運営されます。
収穫祭本祭の模擬店は部活・サークルだけでなく、研究室からも出店があり、来場者を楽しませています。この出店企画を楽しみに来場いただく方が多いのですが、それだけでなく文化学術展も楽しんでいただけると嬉しいですね。各研究室の研究成果を知ることができ、農大らしさを実感していただけると思います。
収穫祭の体育祭(※3)は、1905(明治38)年の遠足会のときに余興でおこなった運動競技がはじまりとされているので、収穫祭における最も伝統ある催しと言えます。学生が本気で取り組む「綱引き」は、例年とても盛り上がりますし、各学科が衣装から振り付けまで工夫を凝らした応援合戦は、学生たちの成長と新たな魅力を感じることができます。
充実した大学生活を送ることで、学生は「何にやりがいを覚えるのか」「何をしているときに楽しいと感じるのか」など、キャリア探索につながる「自分らしさ」を見つけていきます。ガクチカ(「学生時代に力を入れたこと」の略)のための経験ではなく、大学生活のなかでの真剣な取り組みが、結果として就職活動にも活きてくると考えます。
▼これからの展望や取り組み
キャリア支援の今後の展望として、考えていることが三つあります。1つはキャリア意識の高い学生の支援です。選抜型で実施している「就活ゼミ」をもっと発展させていきたいですね。
2つ目は、多様な学生の支援として学内の関係する所管や外部機関との連携を強化していきたいと考えています。
最後に、建学の精神「人物を畑に還す」に基づき、農大で学び地元で即戦力として活躍する学生の支援です。本学には全国から学生が入学してきます。UIJターンの促進のための相談会や講座、情報提供などを定期的に行っていますが、Uターン就職は例年35~38%程度です。地元企業や公務員希望者を伸ばしていく効果的な支援を模索しており、在学生だけではなく卒業生にも広げていきたいと考えています。
私のキャリアを振り返れば、就活に苦戦し、ずいぶん回り道をしてきました。しかし、それが今の仕事に生きており、自分で決めたことだからこそ前を向くことができたと感じています。高校生までは周りに倣って受験勉強をし、大学に入学して楽しい学生生活を過ごしてきた学生からすれば、大学3年生になった途端に将来の選択を迫られることは、不安や戸惑いを感じる原因かもしれません。
大学生活のなかには、キャリア発達をうながす様々なきっかけや出会いがあります。そうした多様な体験を通して、社会人として活かせる「自分らしさ」が見えてきますし、キャリア決定する際の手がかりが得られるはずです。自分で自分のキャリアを決めていくことができるよう支援を心掛けていきたいですね。
キャリアセンターは、学生や卒業生と直接の利害関係がないポジションです。だからこそ実施できる取り組みがあると考えています。100%本人の見方となって伴走していくことを大切にして、必要な人たちにキャリアセンターの支援をしっかりと届けていけるよう、これからも尽力したいと思っています。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕
※1
農大キャリアナビ(「求人受付NAVI」での受付となります)
http://www.kyujin-navi.com/uketsuke/
※2
収穫祭
・創立133年 世田谷キャンパス収穫祭
2024年11月1日(金)~3日(日)
https://harvest-fes.com/
・第25回 厚木キャンパス収穫祭
2024年11月2日(土)~3日(日)
https://www.atsugifes.com/
・第36回 オホーツク収穫祭
2024年10月13日(日)・14日(祝)
https://www.okhotsksyukakusai.info/
※3
体育祭
https://www.nodai.ac.jp/campus/festival/2020/setagaya_syukakusai/25618/25640/25645/
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<大学データ>
東京農業大学
https://www.nodai.ac.jp/
〇世田谷キャンパス
〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1
〇厚木キャンパス
〒243-0034 神奈川県厚木市船子1737
〇北海道オホーツクキャンパス
〒099-2493 北海道網走市八坂196
世田谷キャンパスキャリアセンター
TEL:03-5477-2234
FAX:03-5477-2641
Email: shushoku@nodai.ac.jp
厚木キャンパス キャリアセンター事務課
TEL:046-270-6228
Email: career-a@nodai.ac.jp
北海道オホーツクキャンパス キャリアセンター事務課
TEL:0152-48-3816
Email: career-h@nodai.ac.jp
[学部]
○農学部(厚木キャンパス)
農学科、動物科学科、生物資源開発学科、デザイン農学科
〇応用生物科学部(世田谷キャンパス)
農芸化学科、醸造科学科、食品安全健康学科、栄養科学科
〇生命科学部(世田谷キャンパス)
バイオサイエンス学科、分子生命化学科、分子微生物学科
〇地域環境科学部(世田谷キャンパス)
森林総合科学科、生産環境工学科、造園科学科、地域創成科学科
〇国際食料情報学部(世田谷キャンパス)
国際農業開発学科、食料環境経済学科、
国際バイオビジネス学科(アグリビジネス学科)、国際食農科学科
〇生物産業学部(オホーツクキャンパス)
北方圏農学科、海洋水産学科、食香粧化学科、自然資源経営学科
[大学院]
農学研究科、応用生物科学研究科、生命科学研究科、
地域環境科学研究科、国際食料農業科学研究科、生物産業学研究科
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