2023.03.22メールマガジン
【キャリアセンター長・インタビュー】 成城大学 キャリアセンター 課長 植木 紀之 氏
新宿から急行で15分という好立地ながら、閑静な住宅街にキャンパスはある。全ての学部学科が1つの構内にあることをワンキャンパスと表現するが、この大学のワンキャンパスは規模が違う。幼稚園から大学・大学院までが同じキャンパスにあり、地域住民とも近い距離で学校生活を送っている。こうした街ぐるみの幅広い人々との交流やその環境が、教育の礎となっている。
今回は成城大学キャリアセンター、課長の植木 紀之(のりゆき)氏にお話しを伺った。
◆成城学園としての教育理念
本学の母体である成城学園は、文部次官や東北・京都帝国大学の総長を歴任した澤柳政太郎が、1917(大正6)年に設立した「成城小学校」がはじまりです。画一的な教育になりがちだった当時の公立学校に限界を感じ、実験的教育の場として私立小学校を作りました。
人それぞれが備えている個性を開花させることを教育の理想として、「個性尊重の教育」「自然と親しむ教育」「心情の教育」「科学的研究を基とする教育」という4つの綱領を掲げています(※1)。
1950(昭和25)年に成城大学が設立され、現在は4学部11学科を擁する人文社会系の総合大学となりましたが、この4つの綱領は、教育のあらゆる場面でいまでも大切にされ、活かされています。
本学園は2017年に設立100周年をむかえました。これを「成城学園第2世紀」のはじまりとして、新たな教育改革を進めています(※2)。
中核となる3つの柱として、「国際教育」「理数系教育」「情操・教養教育」を掲げ、次の100年を見据えた人材育成をおこなっているところです。
◆リベラルアーツ教育とデータサイエンス科目
本学が育む人間像の1つに“独立独行”があります。自分の信じる道を、自分で切り開いていく。この“独立独行”こそ「次なる社会を開く力になる」と澤柳政太郎は説いています。この“独”は、独り(ひとり)を指すのではなく、「“自分”として人とつながって生きていく」という意味もあると私は考えます。
自分を活かしながら、多様な人とつながり、仕事をするということは、簡単なことではありません。なによりも先ず、土台となる幅広い教養、
リベラルアーツが求められます。本学は旧制高等学校として、戦前からリベラルアーツ教育を行い、現在でもその流れを汲んだカリキュラム展開をしています。“独立独行”という人間力を育むには、適した環境と言えるでしょう。
近年、データサイエンス分野の素養がある人材ニーズが高まっています。こうした潮流が顕著になる以前の2015年度から、本学では「データサイエンス科目」(※3)を開講しており、多くの学生が履修しています。日本初のデータサイエンス学部の設置が2017年なので、データサイエンス科目開講という点では、文系大学において日本で最初期と言っても過言ではありません。
人文社会系の大学には、馴染みの薄い学問分野と思われがちですが、リベラルアーツ教育を掲げる人文社会系の大学だからこそ、必要な素養と言えます。データサイエンスやAIに関する知識やスキルを網羅的に学び、いかに実社会のなかでデータを活用していくのかを考える。こうした人文社会系らしいアプローチで学問を修めています。
◆キャリアセンターの今後の展望
2011年にキャリア教育を体系化して「就業力育成・認定プログラム」(※4)として整えました。これが本学のキャリアサポートのベースとなります。キャリアデザイン科目というカテゴリーを設けること自体、初めてのことだったので、教職員同士のコンセンサスを得ることに苦労もあったと聞いています。
それから10年経ち、さらに新型コロナによって社会全体が大きく変化しました。社会から求められていることが変わってきていることを、支援サイドだけでなく、学生も感じとっています。この先をふまえた新しいキャリアサポートが求められているのかもしれません。このような状況を踏まえ、現在、キャリアデザイン科目のカリキュラム改革を検討しているところです。
昨秋、キャリアセンターがリニューアルされました(※5)。学生の有志団体であるキャリアサポーターと職員が1年以上の時間をかけて、学生にとって使いやすく、機能的なキャリアセンターが誕生しました。就活期間という一時期に立ち寄るだけでなく、4年間のキャンパスライフのなかに自然と加わっているような場所にしたいですね。
私がキャリアセンターに着任して約半年が経ちました。少しずつですが、今後の課題も見えてきたように感じます。キャリア支援のネットワークを広げていくことも、その1つです。以前は教務課におりましたので、各部署を有機的につなげる学内ネットワークづくりには適しているのかもしれません。それぞれの機能を活かして、学園全体で学生のキャリア支援ができる仕組みになれば素敵ですね。
◆実験的キャリアサポートの場
本学の学生は、それぞれが素晴らしい個性を持っていますが、それを表に出さないおとなしいタイプが多いように感じます。しかし、社会のさまざまなポジションで活躍している先輩たちを知ることで、個性が引き出されることが少なくありません。在校生や卒業生に共通する校風というか、成城っぽさに自身を投影しやすいのでしょう。「良き校風」は活かしつつ、学生の個性や積極性を引き出す支援策を、キャリアセンターでも展開していきたいと思っています。
便利な時代になり、情報や選択肢はどんどん増えています。一方で、マニュアルやルールが増え、窮屈さを感じることも多くなりました。自分の意思でキャリア選択することが、難しい環境になっています。就活支援としてノウハウや知識の提供は必要ですが、過剰になれば主体性が失われます。学生自身が、その時点での最善を選択できるようになるには、どうすれば良いのか。難しい問題です。
本学が持つリソースを活かした支援アプローチも一案でしょう。この街に住む地域住民との交流。幼稚園から大学生、最近では生涯学習支援事業「成城学びの森」(※6)にも力を入れているので、社会人も学ぶ多様性あるキャンパス。こうしたコミュニティーを活用して、社会の見方や視点を増やしていけると良いですね。
もともと「実験的教育の場」が本学のはじまりです。社会に出る手前の4年間で、どんな支援ができるのか。これまでの支援策だけでなく、できる限りの実験もおこなっていきたいと思います。そして、周囲と人とつながりながら、自分自身の人生を歩んでいける“独立独行”な人間に育ってほしいと願っています。〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕
※1
建学の精神
https://www.seijogakuen.ed.jp/thought/founders-vision/
※2
教育改革の3つの柱
https://www.seijogakuen.ed.jp/thought/plan/
※3
データサイエンス科目
https://www.seijo.ac.jp/education/support/ge-center/ge/data-science/
※4
就業力育成・認定プログラム
https://www.seijo.ac.jp/career/career-support/career-prog/
※5
キャリアセンター、リニューアルオープン
https://www.seijo.ac.jp/career/news/jtmo420000016hde.html
※6
成城学びの森
https://www.seijo.ac.jp/social-activity/lifelearn/index.html
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<大学データ>
●成城大学
〒157-8511 東京都世田谷区成城6-1-20
https://www.seijo.ac.jp/
○キャリアセンター(1号館1階)
https://www.seijo.ac.jp/career/about-careercenter/
TEL:03-3482-9063 (直通)
FAX:03-3482-1213
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