2024.06.04メールマガジン

【ガクチカを書けない理由とAIサービスの未来】

いまの就職活動において、エントリーシート(以下、ES)は避けて通れないものになっています。特にガクチカ(「学生時代に力を入れたこと」の略)は定番の設問なので、ほぼ確実に書く必要に迫られます。これが学生にとっては大きなストレスとなります。
主な要因としては次の3点が挙げられます。

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[1] 就活で評価されやすい自分の特性が分からない

自分のどんな部分が社会人として評価されやすいのか、それが理解できている学生は多くありません。自分の長所だと認識していることが、親から(子どもとして)褒められたこと、先生から(生徒として)評価されたことばかりでは、「言われたことに逆らわない」「従順に勉強する」といった、就職活動では的外れなPRになりかねません。自分のどんな特性を書けばよいのか分からない、そもそも自分にPRできることがあるのか。そんな不安に襲われます。

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[2] スゴい経験を書かないと評価されない!という誤解

評価されやすい自分の特性が分からないので、資格取得や留学経験、サークルのリーダー職や部活動の実績(優勝経験など)など、分かりやすい名前の付いた成果を欲しがります。選考という場で戦うための武器を得て、安心したい気持ちがあるのでしょう。志望企業から選ばれるには、人よスゴい経験(武器)が必要だと考える学生は少なくありません。低学年から「就活のために○○をしようと考えている」といった声は、よく耳にします。

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[3] 文章スキルの低さ

社会人の目から見て「読みやすい」と感じる文章が書ける学生は、あまり多くありません。ESを添削するときは、内容のアドバイスより先に文章表現の修正から入ることがよくあります。企業に提出できるレベルのESが書けるようになるには、相応の時間が必要になります。

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学生にとってガクチカを書くというハードルは高く、結構な時間を要します。もっと手軽に、効率よく書き上げたい思う気持ちも当然なのかも知れません。こうした学生ニーズを反映して、生成AIを活用したES作成サービスは増えています。例えば「ESの達人」というサービスでは、いくつかの選択式の問いに答えるだけで、瞬時に指定文字数でガクチカを書き上げてくれます(※動画参照)。

テクノロジーを上手く活用するスキルは重要です。しかし、Chat GTPに適切なプロンプト(指示文)を与える必要もなく、複数の項目を選ぶだけでOK!といった便利すぎるサービスの利用には留意が必要でしょう。アッという間にガクチカが完成することと引き換えに、社会人として必要な思考力と書く力をトレーニングする機会を失います。節度ある生成AIとの付き合い方が求められます。

企業も採用業務の効率化のため、エントリーシート評価にAIを活用しています。ES作成サービスを活用して書いたガクチカを、企業のESチェック用AIが評価する。こうした採用選考はすでに現実のものとなっています。

生成AIが作成したESなのかを判別するサービスが出ても、イタチごっこが続くだけでしょう。なぜ採用選考にESを課しているのか・・・。その目的を再考する必要があるように感じています。もし応募へのハードルを設けることで、志望度の高い学生をスクリーニングすることが目的なら、すでにその役目は果たしていません。面接での質問素材にするだけなら、動画にあるような選択式のアンケートに答えてもらうだけで充分でしょう。文章力で言語能力や知的レベルを見たいのなら、別のテストを課す方が適切です。

先日、アップデートしたChat GPT-4o(オムニ)が発表されました。このサービスを用いて、人間よりも人間らしく質問するAI面接官が現実のものになるでしょう。同時に、より便利で使いやすい就活支援サービスも増えていくはずです。採用選考において、何をどう評価するのか。その本質的な問いについて考え、見直す必要性が高まってきました。

【補足】
この原稿タイトルはChat GPT-4oが考えたものです。また文章の一部も書いてもらい、校正とアドバイスを参考にして仕上げました。

※ ONE CAREER×ChatGPTで実現!『ESの達人』が自己PRを激変させる

〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

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